黄表紙のぞき

黄表紙のぞき

お江戸のコミックを現代語訳!『黄表紙のぞき』

「黄表紙」とは、草双紙の一ジャンル。
それまで赤本、青本、黒本などと呼ばれる子供向き、女性向きだった草双紙に、安永四(1775)年、大人の男性を意識した一冊が登場します。

これが恋川春町という、まるで少女漫画家のような名前の作者(でもれっきとした武士)が描いた「金々先生栄花夢(きんきんせんせいえいがのゆめ)」という作品。田舎から出て来た主人公が、休憩に立ち寄った粟餅屋でついうたた寝。その夢の中で大金持ちになって遊びまくるというお話です。

これがヒットして、黄表紙というジャンルが流行しました。まるで漫画のように、絵と文が一体化して進むストーリー展開。あらすじは中国の故事などを下敷きにしながらも単純明快、ダジャレ合戦、まさに荒唐無稽でくだらないにもほどがある脱力系。でもそこがクセになる!

山東京伝や十返舎一九といった、有名作家の筆がおどる名作、快作を、分かりやすい現代語訳でお届けします。2025年度のNHK大河ドラマ『べらぼう』の主人公、蔦屋重三郎が営む「耕書堂」から出版した作品もありますので、ドラマを存分に楽しみたい方にもおすすめです。ぜひ、お江戸のコミック「黄表紙」をのぞいてみてください♪

(左/スマホでは上)『箱入娘面屋人魚』(国会国立図書館デジタルコレクションより)。

上記のようなくずし字を現代語にして(右/スマホでは下)読むことができるのが、本書『黄表紙のぞき』です。

『黄表紙のぞき』(黄表紙の現代語訳)

「黄表紙のぞき」
「黄表紙のぞき」

◆2019年初版発行

訳 大和 愛

内容

『黄表紙のぞき』には下記の5作品を収録。黄表紙の代表作として名高い作品なので、これを読めば黄表紙がどんなものかざっくりわかります◎

「金々先生栄花夢」(きんきんせんせいえいがのゆめ)/恋川春町

粟餅ができるまでの夢を描いた、お江戸のサクセスストーリー。

都会で一旗あげようと田舎から出てきた「金村屋金兵衛」が、途中で立ち寄った粟餅屋でついうたた寝をしてしまう。夢の中で金兵衛は富豪の跡取りとなって、大都会・江戸の遊郭で遊びの限りを尽くすのだった。お江戸の大人の遊び場、吉原・深川・品川のそれぞれの特徴やしきたり、ファッションなど当時の風俗が満載の楽しい一冊!

「桃太郎後日噺」(ももたろうごじつばなし)/朋誠堂喜三二

お伽噺のその先は? なんと鬼と猿があんなことに…!

子供むけの昔ばなし「桃太郎」を、大人向けにアレンジしたのが本作。鬼ヶ島で鬼を退治した後、鬼ヶ島の大将の息子、白鬼をお供にして帰って来た桃太郎。白鬼は角を切り、桃太郎と共に元服をしてまるで人間のような姿になったが、これに嫉妬したのが猿だった。女中のお福との三角関係の恋のもつれ、そこに鬼ヶ島から白鬼のフィアンセまで登場してついにはどろどろの修羅場に発展してゆく…!

「的中地本問屋」(あたりやしたじほんといや)/十返舎一九

「東海道中膝栗毛」で知られる十返舎一九が、自ら出版の舞台裏をさらす!

地本問屋というのは、江戸ではじまった絵草子や浮世絵などを販売する本屋のこと(出版社と書店の両方を兼ねる)。本作は、すでに人気作家だった十返舎一九に作・絵により、作家への執筆依頼から印刷、製本、販売までの工程を面白おかしく描いたもの。当時の人も、作家や出版の工程に興味津々だったもよう。は~、拍子にのってかけやんしょ♪

「江戸生艶気椛焼」(えどうまれうわきのかばやき)/山東京伝

芝居にでてくるような色男になってみたい!愛すべき大金持ちのおぼっちゃまが大奮闘

二十歳そこそこの艶次郎は大金持ちの一人息子。物語や芝居に出てくる色男になってみたいと、女性の名前を腕に彫ってみたり、女性にお金を払ってファンのふりで家に駆けこませてみたり。とうとうついには心中の真似事まで!? 誰もが憧れるキラキラな色男の世界を、とほうもないお金をかけて大真面目にやってみようとする、そこがバカバカしく愛おしい。この作品がヒットしたことで、なんともチャーミングな艶二郎は作者・山東京伝を表すキャラクターに。

「箱入娘面屋人魚」(はこいりむすめめんやにんぎょ)/山東京伝

これがお江戸のマーメイド? 遊郭で働く夫想いの人魚妻

一目見て魚(ぎょ)っとするお江戸のマーメイドは、なんと首から下がすぐに魚。しかし濡れ濡れとした魚体は、艶めかしくもあって不思議に魅力的。昔話でお馴染みの「浦島太郎」の後日譚というべきストーリーで、浦島太郎が恋と浮気してできた人魚が、漁師の元に嫁ぎ、貧しい夫のために遊郭へ身を売るが…? 荒唐無稽きわまりない、これぞ黄表紙のおかしみが存分に味わえる名作。

サンプルページ

黄表紙のぞきサンプル1
「金々先生栄華夢」より
黄表紙のぞきサンプル1
「箱入娘面屋人魚」より

『続 黄表紙のぞき』(『黄表紙のぞき』第二弾)

「続 黄表紙のぞき」

◆2024年初版発行

訳 大和 愛

内容

続編となる『続黄表紙のぞき』には、下記の5作品を収録。現在も「悪玉コレステロール」などといいますが、そんな悪玉善玉のはじまりとなった「心学早染草」や、短編ながら傑作と名高い「大悲千禄本」など、一生に一度は読んでおきたい作品ばかり!

「心学早染草」(しんがくはやそめぐさ)/山東京伝

善玉悪玉キャラ爆誕!吉原遊郭にはまってしまった男の末路

心学とは、江戸時代中期に都市部を中心として広まった庶民のための生活哲学。この「心学」の流行りに乗って作られた本作品は、善魂と悪魂が一人の人物の体内で覇権を争う様子が面白く、現在でも広く使われる善玉悪玉キャラの先駆けとして有名。遊郭で居続けしようか戻ろうか、悪玉と善玉にそれぞれ両手をひっぱられて悩む男の姿には、現代人も共感できること間違いなし!

「人間一生胸算用」(にんげんいっしょうむなざんよう)/山東京伝

大ヒット作の続編!心が失せれば国は乱れる◎お堅い旦那の体内めぐり

『心学早染草』が大好評につき続編が刊行。前作ですっかりお馴染みになった善魂のすすめにより、豆人形のように小さくなって隣人の若旦那の体内へ入った作者・京伝は、「気」たちが「心」にクーデターを起こす現場を目撃することに。誰しも覚えのある理性と欲望の葛藤が、ダジャレたっぷり、紙面も狭しと書き込まれた楽しい作品。

「莫切自根金生木」(きるなのねからかねのなるき)

金がありすぎて絶望する男。大ヒットメーカーが描く、超ド級の夢物語

タイトルの「きるなのねからかねのなるき」は回文で、「元々金のなる木が生えているのだから切らないほうがいい」という意味。金がありすぎて困った男がなんとか金を減らそうと奮闘する物語で、通常なら金が欲しくてすることのすべて逆を行なう。金貸しや遊郭通い、相場、博打、旅行、富くじなどなど、描かれるのはすべて当時の(いや、今も)庶民のストレートな願望。後半の怒涛のクライマックスに乞うご期待!ウウンウウン…!!

「大悲千禄本」(だいひのせんろつほん)

千手観音の千本の手がレンタル可能と聞いて。さて集まった人々は…?

不況には千手観音もどうする術もない。せめて千本の手を貸し出して衆生の助けをしようと、千本の手の権利を譲って山師に損料貸(レンタル)させるというお話。やってきたのは腕を切り落とされた茨木童子や、手練手管のない遊女、字の書けない人など、手を必要とする人たちばかり。荒唐無稽なアイデアに、謡曲や伝説の逸話などを巧みに取り入れた本作は、短編ながら黄表紙の名作の随一と評価する声も。

「辞闘戦新根」(ことばあらそいあたらしいのね)

流行のダジャレが化け物となって、本屋や画工、彫師を襲いまくる大騒動

まさかのダジャレ(地口)の擬人化。当時の流行語だった「四方の赤(酒を一杯飲むの意味)」や「とんだ茶釜(あてが外れたの意味)」「ならずの森の尾長鳥(ならぬの意味)」などが、化け物となって登場。自分たちのおかげで草草紙屋が儲かっているのに、自分たちになんの見返りもないのはおかしいと、本屋や画工、彫師などを襲いまくる。背景には黄表紙が急激に草双紙の一大ヒットジャンルとなった社会現象があり、とんだ茶釜だけは「たかがダジャレの自分たち、調子に乗り過ぎだ」と、かつて主流だった青本や黒本に助けを求めに行くのだった…。

サンプルページ

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